海賊版サイトブロッキングの有効性を考える

 政府による海賊版サイトブロッキングの勧告が各種通信業者に対してなされたことは記憶に新しいことです。この問題は様々な議論を呼びました。言論の自由や通信の秘密の保障など、憲法に関わるほどの法的な話や、ブロッキングの抜け道を探る技術的な話まで。

 今回は、技術面にフォーカスして、特定のサイトをブロッキングすることの有効性を考えてみます。

サイトブロッキングとは

 特定のURLやIPアドレスに対する通信をブロックすることで、そのサイトを閲覧できないようにする技術で、例えば企業のプロキシサーバやファイアウォール等で扱われてきました。好ましくないサイト(ウィルスを含むような悪意のあるサイト)をブロックすることが目的です。

 法律面での詳しい話は、このPDFなどが参考になります。

技術的問題点

 今回の問題として取り上げるのは、サイトブロッキングの有効性です。

 サイトブロッキングは、URL、ドメイン、IPアドレス等の通信をブロックすることで特定のサイトへの接続を拒否することです。これらにはいくつかの問題があります。

URL、ドメインを拒否する場合

 ドメインを新しく取得すれば簡単に回避できてしまいます。DDNSサービスを利用すれば尚簡単で、ブロッキング担当者と運営者のいたちごっことなることは火を見るよりも明らかです。

IPアドレスを拒否する場合

 FQDNからIPアドレスを特定して拒否することもできます。これは一定の効果が上がるかもしれませんが、やはりIPアドレスの変更も容易にできてしまいますから、根本的解決にはなりません。

サイトの審査

 これらの他に、サイトが違法であるかどうかを審査し、更にそれが正当かどうか(恣意的でないか)を監査する仕組みが必要です。これには莫大な労力とコストがかかることは想像に難くありませんが、その費用をいかにして捻出するのか、という問題も生じます。

サイトブロッキングの抜け道

 一番の問題は、サイトブロッキングを回避する手段はいくらでもあるということです。VPNやリモートデスクトップを利用するなど、一般人にも簡単にできる方法が存在します。

 それでも「一般人はそんなこと知らないから、それなりの効果はあるだろう」と思われるかもしれませんが、現在も書店に行くと「裏技」のような表題で怪しげな書籍が多く並べられていたりします。そうでなくても、「〇〇にアクセスする方法!」などの手順を掲載したサイトが作成されるのは時間の問題です。

 この抜け道を防ぐには、中国の金盾のように全ての通信を検閲し、VPNやリモートデスクトップの接続すら遮断するような仕組みが必要です。

対案として

 この問題は、かつて音楽業界が通ってきた道でもあります。90年代後半から00年代にかけて、MP3などの圧縮技術向上とインターネットの速度向上によって、いわゆる海賊版の音楽が広く出回りました。

 それから暫くして、海外の某大手レーベルはYouTubeなどを使ってフルの音楽を配信するようになりました。広告を入れることによってそれなりの収入を得ることができ、気に入ったらMP3などを購入することができるようにする、という時代に沿った新たなビジネスの形を産み出したのです。

 こうして音楽業界は、CDを販売する従来の形態から、徐々にオンライン主体のビジネス形態に変化してきました。

 同じように紙媒体に依存して生きてきた業界が時代に応じて変化することができれば、それは新たなビジネスの形として生まれ変わることでしょう。

 ちなみに、漫画家の赤松健氏は以前から同じようなビジネス形態を提唱しており、現在は上記のようなモデルのサービスを実際に運営しているようです。

まとめ

 サイトブロッキングは技術的観点で見ると、有効性が疑問視される部分も多くあります。果たして莫大なコストを投じてまで行う価値があるか、もっと他に手段がないのか、これからの動きに期待したいところです。